機械設計における材料選定方法【選定チャート有り】

加工材料の知識

材料選定の方法を知りたい人
多々ある材料の中から適した材料を選定する方法が知りたい。というか,機械設計で用いられる材料っていったいどのくらいあるの?それぞれの材料の大まかな分類とその特性を,できれば簡単に材料選定が出来る方法を教えてください。

こういった疑問に答えます。

目次

  1. 材料選定の方法【10秒で出来る選定チャート有り】
  2. 機械設計に用いる材料の種類とそれぞれの特性を見てみよう

著者の略歴

  • 高専で機械工学を専攻
  • 現在は機械設計のエンジニアとして働く(2年目)

1.材料選定の方法【10秒で出来る選定チャート有り】


まずは,下の選定チャートの質問に答えてみましょう。

ステップ1

プラスチック

アルミ

鉄鋼材料


どうでしょう?

鉄,ステンレス,アルミ,プラスチックといった大まかな選定は出来たでしょうか?

とりあえず,そのくらいの選定は出来たけど,全然理解できてない…という方。
安心してください。第2章で各材料の特徴をざっくりと見ながら,選定チャートの本質を理解していきましょう。

2.機械設計に用いる材料の種類とそれぞれの特性を見てみよう


第2章では,各材料ごとの特性をざっくり見ながら,第1章の選定チャートの理解を深めていきましょう。
下記のような手順で特性を見ていきます。

  1. 各材料の重さ
  2. プラスチックの特性
  3. アルミの特性
  4. 鉄の特性
  5. ステンレスの特性

各材料の重さ

材料選定における最初の基準は『軽さ』が必要か否かでした。
それでは,各材料によってどれだけ重さが違うのか,下表を見てみましょう。

アルミ プラスチック
重さ 基準 1/3 1/5

鉄で作れば『100kg』の部品も,アルミなら『33kg』,プラスチックなら『20kg』で作ることが出来るというわけです。

プラスチックの特性

プラスチックは,『軽量』で『透明性』が必要とされる場合に選定する材料でした。
プラスチックは大きく『3種類』に分類することができ,必要となる性能と許容できるコストから選定を行います。

  • 汎用プラスチック:最も安価な汎用性の高いプラスチック
  • エンジニアプラスチック:機械的強度に優れたプラスチック
  • スーパーエンジニアプラスチック:特に耐熱性等に優れたプラスチック

上記3種類から,さらに何種類ものプラスチックに細分化されますが,今回は良く使う代表的なプラスチックに絞って紹介します。

分類 長所 短所
ベークライト(PF) 汎用 ・安価
・加工性〇
・アルミの半分の軽さ
・耐アルカリ性×
アクリル(PMMA) 汎用 ・透明度が高い ・表面に傷がつきやすい
ポリ塩化ビニル(PVC) 汎用 ・強度〇
・安価
・耐薬品性〇
・耐熱性×
・耐衝撃性×
ポリカーボネート(PC) エンジニアプラスチック ・耐衝撃性〇 ・加水分解を起こす

→さらに詳しくプラスチックの材料選定について知りたい方は下記記事もどうぞ。

アルミの特性

アルミは,『軽量』で『透明性』が特に必要ない場合に選定する材料でした。
アルミは大きく7種類(1000番~7000番)の種類があり,それぞれアルミに化合物を添加させることによって,特性を変化させています。
今回はプラスチック同様,良く使う代表的なアルミ合金に絞って紹介します。

説明
A5052 中程度の強度があり,一般的な工作に向いている
A5083 A5052より強度が高く,溶接性に優れる
A7075 アルミニウム中2番目の強度を持つ(超々ジュラルミン)

→さらに詳しくアルミの材料選定について知りたい方は下記記事もどうぞ。

鉄の特性

鉄は『軽さ』が特に重要視されない部品において,選定する材料でした。
鉄の特徴として,『軽さ』がない代わりに『強度』が高く,『価格』が安いというメリットもあります。
他材料と比較をしたものが下表になります。

アルミ プラスチック
重さ 基準 1/3 1/5
強度 ×
価格

また,鉄の選定における手順は一般的に下記の様になります。

1.炭素鋼を検討:鉄(Fe)に炭素(C)のみを付与して硬さを向上させたもの
👇炭素鋼では要求を満足できない場合
2.合金鋼を検討:鉄(Fe)にクロム(Cr)やモリブデン(M)を添加したもの

これを踏まえて第1章の選定チャートを再度見てみましょう。

と,このように『どのような用途で使うのか』→『炭素鋼でOK?』→『合金鋼検討』というような流れの選定になっています。

→さらに詳しく鉄の材料選定について知りたい方は下記記事もどうぞ。

ステンレスの特性

ステンレスの特性は,何と言ってもその『耐食性』(錆に強い)ところにあります。
そのため,『軽さ』を要求しない部材で『耐食性』が必要な場合はステンレスを選定することがほとんどです。
このステンレスも,細かく見ていけばかなりの種類がありますが,実際によく使われるステンレスは,実は,『6種類』です。
今回はよく使われるこの『6種類』のステンレスについて見ていきましょう。

コスト 強度 耐食性 切削性 溶接性 磁性
SUS303 × ×
SUS304 × ×
SUS316 × × ×
SUS430 ×
SUS410 ◎+ ×
SUS440 ◎+ ×

→さらに詳しくステンレスの材料選定について知りたい方は下記記事もどうぞ。

おまけ【加工材料に関するおすすめ参考書】


材料選定の大まかな手順については本記事で解説しましたが,さらに詳しく勉強したいという方向けに,おすすめの参考書を書いておきます。
私自身もこの本で勉強をスタートしましたので,1冊持っておいて損はないかと。

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