機械設計における材料選定の基準【ポイントは3つです】

加工材料の知識

材料選定の基準が知りたい人
機械設計における材料選定の基準を知りたい。また,選定する上で重要な判断材料になる各材料の特性について知りたい。

こういった疑問について解説していきます。

材料選定における基準というのは案外あいまいなものが多く,材料の種類も膨大な数があることから,材料選定に悩む方も少なくないのではないでしょうか。

また,材料の特性一覧を文字だけで見たところで,具体的な活用方法,用途についてはイメージしづらいことかと思います。

本記事では,こういった悩みを解決できるように,出来るだけわかりやすく材料選定の基準についてまとめました。

本記事を読めばわかること

  • 材料選定の基準3ポイントが分かる
  • 材料特性の見方を理解した上で具体的に何に使えるのか,その用途までわかる

目次

  1. 材料選定の基準となるポイントは3つ
  2. 各材料の特性~具体的用途について

著者の略歴

  • 高専で機械工学を専攻
  • 現在は機械設計エンジニアとして働く

1.材料選定の基準となるポイントは3つ


結論から先に述べると,下記3点が材料選定の基準となるポイントです。

  1. 性能:要求される性能に対してそれを満たしているか?
  2. 流通形状:一般に入手できる形状かどうか?
  3. コスト:上記条件を満たすうえで,最も安い入手できるか?

ただ,これだけ見てもイメージしづいかと思いますので,それぞれのポイントについて解説していきます。

性能:要求される性能に対してそれを満たしているか?

要求される性能と1言で書くのは簡単ですが,検討すべき性能というのは様々あります。

実際の設計によりここは大きく変わってくることになるでしょうが,大まかに考えるべきポイントを下記に書いてみました。

  • 強度:材料の硬さのこと
  • 剛性:材料に力が加わったときの変形のしにくさのこと
  • 耐衝撃性:割れやすさ(硬い材料ほど割れやすくなる)
  • 耐疲労性:繰り返し使用することによる材料劣化具合
  • 耐熱性:材料が安定して使用できる温度
  • 耐腐食性:錆びに強いか?薬品に強いか?
  • 対候性:屋外で使用可能か?

当然,すべての特性において完璧な材料は存在しないので,優先順位を決めてどの特性を第一に考えるかが大切になってきます。

流通形状:一般に入手できる形状かどうか?

材料の形状は大まかに下記のような種類があります。

  • 平鋼
  • 丸棒
  • 四角棒
  • 六角棒
  • 鋼板
  • アングル材

またすべての材料がこれらすべての形状で流通しているわけではなく,その材料の生産方法などにより入手しやすい形状や,そもそも流通がない形状などもあります。

もちろんレーザーやワイヤー放電,溶接などの加工を駆使することでどの形状も作れないことはないのですが,その分コストも高くなってきます。

出来る限り流通のある材料を選定したほうがいいでしょう。

コスト:上記条件を満たすうえで,最も安い入手できるか?

流通の部分でも話に上げましたが,設計をする上で「製作コスト」の話は避けては通れません。

当然,高スペックな材料を選定したり,高度な技術を要する加工法を駆使することで目的の材料を手に入れることは可能です。

しかし,我々設計者は「いかに低コストでこれらの要求を満たす材料を選定するか,ひいては機械や装置を製作するか」が重要になってきます。

ある程度の安全率や余裕度は必要ですが,オーバースペックになりすぎない様な選定を行う必要があります。

2.各材料の特性~具体的用途について


さて,それでは具体的にどんな材料を選定すればいいのでしょうか?

適切な材料を選定するためにも,それぞれの特性を知ることは重要です。

各材料の特性とその用途について見ていきましょう。

※すべての材料を紹介すると膨大な量になってしまうので,今回は良く使用される材料に絞って紹介しています。
種類 JIS記号 特徴 用途
鉄鋼材料 SS400 安価
・ほぼすべての形状の流通がある
・加工性も良く一番最初に検討する材料
・あらゆる構造材として用いられる
・溶接性も良好なので,溶接部材としても使用可能
鉄鋼材料 S45C ・SS400に比べ炭素の含有量が多く強度が高い
・焼入れによってさらに強度を高めることも可能
・SS400では強度的に不十分な場所に用いられることが多い
・炭素の含有量が多く溶接により焼戻りが発生したり,我が発生することもあるのであまり溶接向きではない
アルミ A5052 ・最も汎用的なアルミ材
・流通している形状も豊富
・鉄に比べて1/3の重さになるため,軽さが必要な場合に用いる
アルミ A5083 ・A5052に次いで使い勝手の良いアルミ材
・A5052より強度が高く,溶接材としても向いている
・アルミ溶接部材としてや,強度が必要な部材として用いられる
アルミ A7075 ・アルミ中最強の強度を誇る部材
・いわゆる超々ジュラルミン
・軽さを兼ね備えたまま,鉄鋼材料と同等の強度を持つ
・金属バッドや,航空系の部材として用いられる
ステンレス SUS304 ・耐腐食性が高く,表面処理なしでもほぼ錆びることはない
・粘り強く,加工性は良くない
・ステンレスなんといってもその耐食性が最大の特徴
・耐食性が必要な部材として用いられる
ステンレス SUS440 ・ステンレス中最強の強度
・ただしSUS304に比べて,耐食性は落ちる
・価格はSUS304よりも安い
・強度と一定の耐食性が必要な場所で用いる

以上で材料選定の基準についての解説は終わりです。

各材料についてさらに詳しく知りたい方は下記記事からどうぞ。