機械設計における材料選定の基本【3ステップで材料選定をマスター】
- 想定読者:機械設計エンジニア1年目~2年目
- 記事内容:機械設計における材料選定の基本を解説
機械設計エンジニア若手の方々,特に1年目~2年目の方で材料選定に苦しんでいる方もいるのではないでしょうか?
「先輩の部品図をバラすことになった」,「簡単な部品の設計を任せられた」,こういった時に
- あれっ?これってどの材料で作ればいいんだっけ?
- うーん,よく分からないし鉄にしとこうか
- げっ,鉄も種類多すぎ…どれがいいんだよ…
というように材料選定で詰まる方も多いのではないでしょうか?
結局種類が多すぎて適当に選定した材料で先輩のところに持っていくと
「これ強度は足りてるの?」
「これ流通してない形状だよ」
「なんでこんな高い材料選んでんの?」
と,突っ込みを受けることに…
かく言う私も,同様に材料選定に苦しんでいましたのでお気持ちはよくわかります。
本記事では,このような「機械設計における材料選定悩み」について,3つのステップで学習し,最終的には自力で選定が行える知識がつくように執筆しました。
本記事を読み終えるころには
- 材料選定に必要な基本知識が分かる
- 実務で使えるレベルで材料選定が出来る様になる
というような状態になっている事でしょう。
それでは,さっそく見ていきましょう。
目次
本記事の信頼性
- 高専(機械工学専攻)を卒業
- 機械設計エンジニアとして働く(2年目)
ステップ1.材料選定に必要な3つのポイントを抑える
材料選定をする上で,まずは「何を基準に選定をするべきなのか」を知る必要があります。
結論,下記3ポイントを抑えて選定をする必要があります。
- 性能:要求される性能に対してそれを満たしているか?
- 流通形状:一般に入手できる形状かどうか?
- コスト:上記条件を満たすうえで,最も安い入手できるか?
これらの基準について,詳しく解説した記事が機械設計における材料選定の基準【ポイントは3つです】です。
まずはこちらをどうぞ。
機械設計における材料選定の基準【ポイントは3つです】
機械設計における材料選定の基準を知りたい。材料の種類が膨大で何を基準に材料選定したらいいのか分からない。 また,材料の特性一覧を文字だけで見たところで,具体的な活用方法,用途についてのイメージが湧かない。 本記事では,こういった悩みを解決できるように,出来るだけわかりやすく材料選定の基準についてまとめました。
ステップ2.各材料の性質を大まかに把握する
「何を基準に材料選定すれば良いか」が理解出来たら,次は「大まかに各材料の特性を掴み,こんな時はこの材料が使えそうだなぁというイメージをつけていきましょう。」
機械設計によく使われる材料をざっくりと説明すると下記のとおりです。
- 鉄鋼材料:強度が高く,低コスト。重く錆びやすいので表面処理が必要。
- ステンレス:耐食性(錆びにくさ)が抜群に良い。高価で加工性は悪い。
- アルミ:鉄やステンレスの1/3の重さでそれなりの強度がある。
- プラスチック:アルミの1/2~1/3程度の重さで,透明性がある素材もある。
各材料の特徴や選定方法について解説した記事が機械設計における材料選定方法【選定チャート有り】です。
この記事である程度の材料特性と使い道のイメージを掴みましょう。
機械設計における材料選定方法【選定チャート有り】
材料選定のやり方が知りたい。色々調べてみたけど,種類が多すぎて結局どれがいいのか分からない。もっと簡単に選定出来るチャートがあったら…。この記事は,こういった方向けに書いています。【10秒で】出来る選定チャートを使って大まかな選定をし,そこから各材料の特性について解説していきます。
ステップ3.各材料について深い知識を身に付け,材料選定をマスターする
上記2章で「選定の基準」と「大まかな特性と使い道」が理解出来たら,それぞれの材料について知識を深掘りしていきましょう。
鉄鋼材料について
鉄鋼材料は「軽さが必要ない」場合に最初に候補に挙がる材料です。
具体的な鉄鋼材料の種類とその特性は下記のとおりです。
- SS材【SS400など】:加工性,コスト,流通形状に優れた使い勝手の良い材料
- SC材【SC45など】:炭素の含有量が増え,SS400よりも硬い材料
- 合金鋼【SCr材など】:ニッケルやモリブデンを添加し,SC材よりも硬度を高めた材料
- SPCC:冷間圧延で製造される板状の鉄
- SK材【SK95など】:鉄鋼材料でもトップクラスの硬さを誇るが熱の弱い
- SK材+α【SKD51など】:SK材の熱に弱いという弱点を克服した材料
- ステンレス【SUS304など】:鉄にクロムとニッケルを混合させ,耐食性を向上させた材料
鉄鋼材料の特徴や選定方法について解説した記事が鉄鋼材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】です。
この記事で鉄鋼材料の特性と選定方法をマスターしましょう。
鉄鋼材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】
鉄鋼材料の材料選定方法が知りたい。種類別の特性や価格についても一覧表で一気に確認出来たら…。この記事は,こういった方向けに書いています。【10秒で】出来る選定チャートを使って大まかな選定をし,そこから各材料の特性について一覧表を用いながら解説していきます。
ステンレスについて
ステンレスは「耐腐食性(錆びにくさ)が必要」な場合に候補に挙がる材料です。
ステンレスの種類は,多岐にわたりますが実際によく使われる材料は下記の6種類だったりします。
- SUS304:最も一般的なステンレス
- SUS303:SUS304に比べて耐食性は劣るが,加工しやすい
- SUS316:ステンレスの中でもトップクラスの耐食性を誇る
- SUS430:磁性を持ったステンレス。強度は低い
- SUS410:安価で磁性を持ったステンレス。耐食性は他と比べて低いが強度が高い
- SUS440:SUS410からさらに強度を高めたステンレス
ステンレスの特徴や選定方法について解説した記事がステンレス材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】です。
この記事でステンレスの特性と選定方法をマスターしましょう。
ステンレス材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】
ステンレス材料の選定方法を知りたい。でも種類が多すぎて,一覧表で特徴を見ても何が良いのかいまいち分からない。簡単な選定方法ってないのかな?本記事はこういった方に向けて書いています。実は覚えるべきステンレスの種類はたった『6種類』でOKなんです。選定チャートを使いながら,ステンレスの選定方法を紹介します。
アルミについて
アルミは「軽さが必要」な場合に候補に挙がる材料です。
具体的なアルミ材料の種類とその特性は下記のとおりです。
- 1000系:純アルミ。熱や電気をよく通す。
- 2000系:強度に優れたアルミ。ジュラルミンなどがある。
- 5000系:最もよく使われる汎用的なアルミ材。
- 6000系:強度と耐食性を両立させたアルミ材。
- 7000系:2000系より強度を高めたアルミ材。超々ジュラルミンなど。
アルミ材料の特徴や選定方法について解説した記事がアルミ材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】です。
この記事でアルミ材料の特性と選定方法をマスターしましょう。
アルミ材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】
アルミ材料の選定方法について知りたい。また,アルミ材料の種類やそれぞれの特性,用途についても気になる。この記事は,こういった方向けに書いています。アルミの種類一覧表と選定チャートを使って簡単に選定する方法を紹介します。
プラスチックについて
プラスチックは「軽さが必要&透明度が必要」な場合に最初に候補に挙がる材料です。
また,「金属同士の接触を避けたい」場合などにもプラスチックが選定されることがあります。
プラスチックの種類は多岐にわたるので,ここでは4分類して説明します。
- 汎用プラスチック:低価格で汎用的なプラスチック
- エンジニアプラスチック:耐熱温度や機械的強度を高めたプラスチック
- スーパーエンジニアプラスチック:耐熱性や強度が群を抜いて高いプラスチック
- 熱硬化性プラスチック:熱で硬化するするプラスチック
プラスチックの特徴や選定方法について解説した記事がプラスチック材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】です。
この記事でプラスチックの特性と選定方法をマスターしましょう。
プラスチック材料の選定方法【10秒で出来る選定チャート有り】
プラスチックの具体的な材料選定方法が知りたい。種類別の特性や価格についても一覧表で一気に確認出来たら…。この記事は,こういった方向けに書いています。【10秒で】出来る選定チャートを使って大まかな選定をし,そこから各材料の特性について一覧表を用いながら解説していきます。
機械設計における材料選定の方法を,基準から各材料の詳細な特性・選定まで解説してきました。
もちろん一度にすべてを暗記する必要はなく,ざっくりと理解だけして,必要な時にこのページに戻って確認するなどして活用して頂ければと思います。
機械設計,頑張っていきましょう!
おまけ:錆びのメカニズムについて
アルミやステンレスは鉄に比べて錆に強い傾向にあります。
これは「酸化被膜」と呼ばれるバリアが金属表面形成されることで,水や空気から金属を守っているためです。
これらについて詳しく解説した記事がステンレスやアルミがなぜ錆びにくいのか 【メカニズム解説】です。
ご興味のある方はどうぞ。
ステンレスやアルミがなぜ錆びにくいのか 【メカニズム解説】
ステンレスやアルミが錆びにくいメカニズムを知りたい人向け。ステンレスやアルミが錆びに強いことは知っているけど,なぜ錆びにくいのかまでは知らない。こういった方向けに本記事を書いています。結論,これらの金属が錆びにくい理由は,表面に酸化被膜を形成し,空気や水との接触をバリアするためです。