機械設計の仕事はなくならない!【現役機械設計士が将来性を解説】

機械設計とは

機械設計エンジニアになりたい学生の方や,機械設計者として働き始めて1年目の方は

  • 機械設計エンジニアって正直なところ将来性はどうなんだろう…
  • AIで代替可能な仕事なのかな…

というような不安を1度は抱えたことがあるかと思います。

本記事ではこういった不安を持つ人に向けて「機械設計がなくなることはない!」という話を,2つの理由付きで解説していきます。

ではさっそく見ていきましょう!

目次

  1. 機械設計の仕事はなくならない【2つの理由を解説】
  2. ただし,AIに置き換わっていく仕事もある
  3. 今後,機械設計者として活躍するために必要なスキル

本記事の信頼性

  • 高専(機械工学専攻)を卒業
  • 機械設計エンジニアとして働く(2年目)

1.機械設計の仕事はなくならない【2つの理由を解説】


冒頭でも結論を述べていますが,私は「機械設計の仕事はなくならない」と考えています。

そう考える理由は下記の2つです。

それぞれを深掘りして解説していきます。

顧客ニーズに応えた創造的な機構を設計することはAIでは困難


顧客からのニーズに応えた機械を製作する時」,「世の中にない新たな技術も持った装置を作るとき」,こういった設計は非常に難しく,これこそが機械設計の本質でもあります。

こういった「0ベースで新しい機械や装置を設計」するというのは,AIでは困難であると考えています。

具体的には,下記のような点です。

  • どんな装置レイアウトにすれば最も効率的か
  • メンテナンス性を確保するにはどうすればいいか
  • 扱うワークの性質や,機械の機構上どんな鋼材が適しているか
  • 表面処理は何が最も適切か
  • いくらの予算内で作る必要があるか

これらのことを全て考慮しながら1から機械の機構を設計していくAI技術は,近い未来には実現不可能ではないでしょうか?

私に限らず,機械設計士かつブログで発信をしている

も同じようなお考えを発信しております。

世の中の機械への需要がなくなることはない


現代の世の中では,ありとあらゆるテクノロジーを駆使した機械が普及しています。
スマホや自動車,テレビにPC,家電製品などなど,例を挙げだすとキリがないくらいです。

また当然こういった機械がこれだけ普及しているということは,これらを工場で生産するための設備や装置の需要も大きくなります。

これから先,これらの文明を全て投げ捨てて縄文時代にタイムスリップすることがない限り,機械に対する需要がなくなることはないでしょう。

加えて,これだけテクノロジーが急速に発展する現代,さらに便利で画期的な機械が次々と生まれ,その度にその生産設備を構築していく必要が出てきます。

また,経済産業省が行った「5年後に技術者が不足すると予想される分野」では,

5年後技術者が不足すると予想される分野として「最も不足する分野」「2番目に不足する分野」「3番目に不足する分野」をそれぞれ90分野から選択し回答。
3つの分野の合計において、多い分野は、機械工学(12.4%)、電力(7.5%)、通信・ネットワーク(5.8%)、ハード・ソフトプログラム系(5.7 %)、土木工学(5.5%)である。

という調査結果も発表されております。

※平成30年4月20日(金)公表データ

以上の理由から,機械設計が今後もなくならない職業であると考えます。

2.ただし,AIに置き換わっていく仕事もある


上記で,機械設計はAIで代替することが難しい職業である理由を2つ紹介しました。

しかし,すべての仕事が代替不可能な訳ではなく「AIに置き換わっていくであろう仕事」も存在します。

例えば下記の様な仕事です。

  • 2D⇔3Dのモデリング作業&部品図作成
  • 強度計算や干渉シミュレーション

2D⇔3Dのモデリング作業&部品図作成

手書きの2D図面を3Dにモデリングしたり,3D図面から2Dの部品図に落とし込む「バラシ」などは,AIにより代替されていく可能性が高いと思います。

理由は下記のとおりです。

  • 創造的な要素を含んでいない
  • CAD操作スキルや製図ルールを知っていれば誰でもできる
  • CADの細かな操作やJISの膨大なルールを暗記するのは人間よりコンピュータに向いている

強度計算や干渉シミュレーション

これに関してはすでに,CAD上で解析することが可能になっています。

現状はシミュレーションの精度がそれほど高くなかったり,シミュレーション機能の付いたCADはライセンス料金が高額だったりとまだまだ発展段階ではありますが,CADのアップデートが進むことでこれらの作業を自動化できる可能性は大いにあると考えています。

以上のような仕事はAIに置き換わっていく可能性がありますが,単に「AIに仕事を奪われる」のではなく「AIにこれらの仕事を任せてより創造的な設計に注力することが出来る」と考えれば,これからの機械設計者に求められるスキルもわかってくることと思います。

3.今後,機械設計者として活躍するために必要なスキル


前章の最後にも述べましたが,今後は「より創造的な,人間にしかできないスキルを磨いていく」必要があると考えています。

具体的には下記のとおりです。

  • 顧客の要望を正確に把握し,提案や問題解決出来る能力
  • AIを活用するスキル

顧客の要望を正確に把握し,提案や問題解決出来る能力

機械設計エンジニアは,とにかく設計だけに注力していればいいわけではありません。

具体的には,下記の様な業務があげられます。

  • 顧客の要望を正確に理解し,問題解決の提案を行う
  • 装置トラブルが発生したときに,早急に原因を解明し復旧させる
  • トラブルが再発しないように改善を行う

顧客が機械や装置の設計を依頼するということは,その機械や装置によって何らかの解決したい問題があるはずです。

その問題に対するアプローチとして,この要望の機械構成で本当にいいのか?
もっといい方法はないのか?

こういったところまで踏み込んで提案できる力を身につければ,重宝される機械設計エンジニアになれるのではないかと思います。

実際に私の周りでも,このような提案をしている人が出世している傾向が強いです。

また,トラブルに迅速に対応できる能力も必要です。
工場の生産ラインで装置が止まると,場合によっては1日で何千・何億の損害が発生する場合もあります。
こういった時に早急にトラブルの原因を解明して復旧させることは損害を抑えるうえでも非常に重要です。

これらの理由で,提案力や問題解決能力というのは身につけるべき重要なスキルであると考えています。

AIを活用するスキル

一昔前であれば,「メカ屋だからメカ設計のみを深掘りして極めていく!」といったキャリアも通用したかと思いますが,前述したようなAIを使いこなせるスキルも必要になってくることでしょう。

自動化できる業務をAIに任せ,空いた時間で創造的な業務に注力する人と,すべてを自分でこなそうとする人。
どちらが効率的に成果を残せるかは明白かと思います。

おわりに

機械設計が将来的になくなることはない理由を解説してきました。
これから機械設計エンジニアになりたい学生の方や,機械設計者として働き始めて1年目の方のこういった不安を払拭することが出来ていれば幸いです。