【機械設計とは?】現役機械設計士が仕事内容・やりがい・年収を徹底解説

機械設計とは

機械設計という仕事に興味があり,情報収集をしている皆さんは下記のような疑問をお持ちではないでしょうか?

  • 機械設計の仕事内容を知りたい
  • 忙しいって聞くけど残業も多いの?
  • やりがいやきついところは?
  • ふっちゃけ,リアルな年収ってどのくらい?
  • どんなスキルや知識が必要?
  • 一人前になるまでにどのくらいかかる?
  • 自分は機械設計に向いているな?
  • 機械設計の将来性は?AIで代用されるの?

かく言う私も,学生時代に機械設計という仕事について調べているとき,このような疑問を抱えておりました。

本記事では,こういった疑問に対して現役機械設計エンジニアの私が「機械設計という仕事について徹底解説」していきます。

それではさっそく見ていきましょう!

目次

  1. 機械設計の仕事内容
  2. 業務量と残業時間について
  3. 仕事のやりがい【楽しいところ・きついところ】
  4. 年収は?【若手・中堅・ベテランそれぞれの年収公開】
  5. 必要なスキル
  6. 一人前になるまでの期間
  7. 機械設計の向き不向き
  8. 機械設計の将来性【AIに仕事を奪われることはない】

本記事の信頼性

  • 高専(機械工学専攻)を卒業
  • 機械設計エンジニアとして働く(2年目)

1.機械設計の仕事内容


機械設計とは,その名の通り「機械」を「設計」する仕事です。
身近なもので「スマホ」や「自動車」,大きなものになると「工場で稼働する生産設備や装置」といったもがありますね。

ではそれらの機械を設計する仕事は,具体的にどのように進められるのか。
仕事内容をステップごとに分解し,それぞれを解説していきます。

見慣れない単語が散見されるかと思いますが,それぞれの意味についても説明していきますので安心して読み進めてください。

仕事の流れ

  1. 顧客から依頼を受ける
  2. 構想設計を行う
  3. DR1(デザインレビュー1)
  4. 基本設計を行う
  5. DR2(デザインレビュー2)
  6. 詳細設計を行う【図面のバラシ】
  7. 部品の発注
  8. 組立と動作確認
  9. 客先に機械を納入

1.顧客から依頼を受ける


まず最初に,顧客から「こんな装置・機械が欲しい!」という依頼を受けます。
依頼を受けたら顧客の要求するスペックや仕様についてヒアリングを行い,具体的にどんな機械を設計していくかを洗い出していきます。

ここで認識にズレが生じてしまうと,見当違いの機械を設計してしまうことになるので不明点は出来るだけ解消していきます。

※開発職の場合は依頼ベースではなく,自己発信型で新たな機械や装置を開発することもあります。

2.構想設計を行う


顧客へのヒアリングが完了したら,次は「構想設計」に移ります。
構想設計とは,機械や装置の大まかな構造やレイアウトを考えていくステップにあたります。

ここでよく使われるのが「ポンチ絵」です。(マンガとも呼ばれたりします)
下記の図のようにイメージを具体的な絵や図にしてラフに描いたものを指します。

ポンチ絵で具体案を何案か出しながら,一番良さそうなアイデアをCADを使って3D化していきます。

3.DR1(デザインレビュー1)


ある程度の構想設計が練れたら,次は「DR1(デザインレビュー1)」を行います。

DR(デザインレビュー)とは,機械や装置の構成について上司や取引先を相手に
こんな構成で設計していこうと思います!これでいいですか!?
といった確認を取る場になります。

今回の場合は,構想設計後のDRとなるので大まかに

  • この構成で進めていいか
  • この構成だと,要求されたスペックに対してこれだけの余裕度があるよ
  • この構成の場合,予算と納期はこれだけ必要だよ

といったことを確認する場になります。

実はこのDRが機械設計者にとって恐怖の場であったりします(笑)

というのも,時間をかけて練った構想案を時には原型がなくなるまで修正されることもあるし,考慮すべきポイントの抜け漏れがあったときには容赦ない詰めが入ります。

私自身も今までに3度のDRを経験してきましたが,やはりDR前は緊張と不安で手が震えたりしますね(笑)

ただ周りもいい物を作ろうと熱が入っているだけですので,悪意を持って攻撃してくるわけではありませんし,新人がいきなり1人でDRを行うことはありませんので安心してください。

4.基本設計を行う


DR1が終了し構想設計について承認が下りたら,次は「基本設計」を行います。

基本設計では下記のようなことを行います。

  • 具体的な部品の形状(強度計算)
  • 使うモータやシリンダ,歯車などの機械的要素の選定~設計
  • 部品同士の干渉が無いか

具体的な部品の形状(強度計算)

繰り返し使用しても壊れない強度になっているか,部品の軽さやコストを考えた上で材料を選定しているか,などを考えながら部品の形状や材質を決定していきます。

使うモータやシリンダ,歯車などの機械的要素の選定~設計

モータやシリンダ,歯車などの機械的要素に関しても,要求されているスペックを満たすようなものを選定する必要があります。

例えば,最高時速「300km/h」が出る電気自動車が欲しいといわれて最高速度「200km/h」しかでないモータを選定してはいけませんよね?
本来はもっと様々な要素が絡み合った中の選定になりますが,イメージ的にはこういったことになります。

部品同士の干渉が無いか

さらに,スペックや強度は満足したけど実際に動かしてみると部品同士が干渉して思うように動いてくれないし,最悪壊れてしまう
このようなことがあってはいけないので,実際の動きをイメージしながら干渉が起きないかをチェックしていきます。

使用するCADによっては干渉チェック機能の付いたものもありますのでそれらを利用して確認していきます。

5.DR2(デザインレビュー2)


はい。またやってきましたね(笑)
DR2(デザインレビュー2)です。

DR2はDR1の内容が基本設計についてに変更されたと思っていただいて問題ありません。

部品形状や機械要素の設計・選定に関するブラッシュアップを行います。

6.詳細設計を行う【図面のバラシ】


DR2が終了し基本設計についても承認が下りたら,次は「詳細設計」を行います。
詳細設計では主に3D→2D図面への落とし込み【バラシ】を行います。

3D→2D図面への落とし込み【バラシ】

現在,ほとんどの企業は3DCADを利用して3次元で図面を描き,機械設計を行っています。

ただ加工部品の場合,3Dの状態のままだと

  • 全長はいったい何mmなのか?
  • 穴のサイズはいくらか?
  • 穴の位置はどこか?

などなど,こういった加工寸法が分からず業者に部品の加工依頼をすることが出来ません。

そこで「第3角法」と呼ばれる手法を用いて3Dの図面から2Dの図面へと変更し,加工に必要な寸法を入力していきます。
この「3D」→「2D」へ変更し,寸法を入れて加工依頼が出来る状態にすることを「バラシ」と呼びます。

自分が設計した部品全て対してこの「バラシ」を行い,寸法記入の抜け漏れ等が無いかをチェックします。(これを検図と呼びます)

7.部品の発注


バラシと検図が完了したらようやく部品の発注に入っていきます。
多くの場合,各業者に対して購入する部品の見積もりを取得し,会社の調達課経由で発注することになるでしょう。

8.組立と動作確認


発注した部品が全て届いたら,それらを組立・立ち上げ(動作確認)していきます。
組立作業は機械の規模によっては自分で行うこともありますが,基本は外注をしたり,組立専門の部署があったりします。

組み立てが完了したら,今度は狙い通りに機械が動くかどうかをチェックする立ち上げ作業を行っていきます。

9.客先に機械を納入


機械の組立と立ち上げが完了すればあとは,依頼のあった客先に納入して仕事は完了です。

実際には,客先の工場に出向いてセットアップをしたり,納入後にトラブルが発生した際は対応したりと,「納入さえすれば終わり!」となるわけではありませんが,大まかに一連の仕事の流れと内容は把握出来たかと思います。

2.業務量と残業時間について


機械設計職と聞くと「激務」や「残業が多い」といったイメージを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実際のところどうなのか?
私の実例を踏まえて解説すると

繁忙期

残業時間は「50~80時間」程度です。
人によっては厳しい納期に合わせて設計を進める必要があったりするため,「100時間以上」残業する人もいます。

客先から短納期の設計依頼があった場合などは,やはり忙しくなるためこのくらいの残業をせざる得なくなってしまいます。
また,組み立て段階で設計ミスが発覚し,早急に修正が必要な場合なども残業が発生する原因になったりします。

普段

残業時間は「0~20時間」程度です。
繁忙期の残業時間だけ見ると「うわっ,やっぱり忙しそうだ…」となりがちですが,急ぎの案件やミスがなければ残業はそこまで多くありません。

もちろん,ここで紹介した残業時間はあくまで私の経験に基づいたものになりますのですべての企業で当てはまるわけではありませんが,1つの事例として考える参考にはなるかと思います。

3.仕事のやりがい【楽しいところ・きついところ】


機械設計の仕事をする上で感じる「やりがい」や「楽しいところ」・「きついところ」というのは皆さんも気になるところかと思います。

ここでは私が実務を通して感じたこと書いていきます。

やりがい・楽しいところ

機械設計のやりがいは,「自分の設計した機械が想定どおりに動いた時」ですね。

全く何もない0の状態から「ポンチ絵→3DCAD」でイメージを具体化して,実際に機械として組み立てた実物が自分の想定通りの動きをしてくれると感動するものがあります。
(あの瞬間は、自分は天才なんじゃないかと酔いしれたりします笑)

また,納入した装置が実際に現場で稼働して製品を作り出している姿を見ると
自分が苦労して作り上げた機械は無駄じゃなかった!役に立ってるんだ!
と実感することができます。

こういったところに楽しさや,やりがいを感じますね。

きついところ

逆にきついところですが、

  • 設計初期段階のゴールが見えないとき
  • 組み立て段階でミスが発覚して早急な修正が必要になったとき

こういったときには,かなりしんどい思いをします。

顧客から依頼を頂いた当初は,

え?これ納期に間に合うかな?
こんなの実現できる機構思いつくのかな?

と不安なったりします。

また必死に考えた構成がDRで通らず,仕事が全く進んでないにもかかわらず納期だけが迫ってくるというのもかなり辛く感じることもありました。

ようやく作り上げたにもかかわらず,部品の干渉が組み立て段階で発覚した時などは冷や汗が止まらなくなります。

こういったところはやはり機械設計のきついところかと思います。

4.年収は?【若手・中堅・ベテランそれぞれの年収公開】

機械設計士の平均年収

機械設計職の平均年収は >就活の未来 様のサイトを参考にさせて頂きました。

DODAによると、機械設計の平均年収は474万円です。また、転職会議によれば、最高年収は1,200万円、最低年収は180万円で、平均年収は479万円という結果になりました。

若手の年収

  • 年齢:22歳~30歳(役職無し)
  • 月収:22万~27万
  • ボーナス:夏冬2回で4か月(会社業績による)
  • 年収:390万〜480万

中堅の年収

  • 年齢:31歳~40歳(主任・係長クラス)
  • 月収:27万~35万
  • ボーナス:夏冬2回で4か月(会社業績による)
  • 年収:480万〜620万

ベテランの年収

  • 年齢:40歳~50歳(係長・課長クラス)
  • 月収:35万~50万
  • ボーナス:夏冬2回で4~6か月(会社業績による)
  • 年収:620万〜900万
※一ヶ月の残業を20hと見積もっています

上記は,私の年収と私の上司の年収参考に書いたものです。役職がついて出世する人の中にはこれ以上の額をもらう方もいます。

とはいえ、やはりこの年収も「車関係の設計」なのか、「半導体装置」なのか、「食料品等の生産設備」なのかなど、業種によっても大きく異なる部分があります。

この年収はあくまで機械設計という職種の一つとして参考にしてもらえますと幸いです。

5.必要なスキル


機械設計の仕事をする上で必要なスキルはかなり幅広くあります。

具体的にスキル例を挙げてみますと

  • モータ/歯車/軸受けなどの機械要素の知識
  • 4力学の知識
  • 機械材料の知識
  • 表面処理の知識
  • 加工の知識
  • 製図の知識
  • CADの知識

といった感じで、必要なスキルや知識はかなり幅広く要求されます。
ここで列挙したスキルはあくまで最低限(これでも足りないかもしれませんが)であり,この他にも必要な知識は存在します。

とはいえ、最初から全てをマスターしている人はいませんし、全てを暗記する必要もありません。実務を通して少しずつこれらの考え方を身につけていけば大丈夫です。

6.一人前になるまでの期間


機械設計の業務についたとして,どのくらいで一人前になれるんだろう?

こういったことも気になることかと思います。

私自身がまだ2年目の機械設計者ということもあり,まだまだ一人前とは言い難いですが,周りの先輩や上司を観察する上である程度の能力値と勤務年数の関係性はわかってきました。

一つの参考値として見て頂けると幸いです。

1~2年目(見習い)

先輩や上司が設計した装置や機械の部品バラシを行う。
→先輩の装置/機械から機械設計のノウハウを吸収する期間。

3~4年目(少し慣れてきた)

小規模なユニット設計を行う。
→先輩や上司の設計する大きな装置の中で,一部の機構のみを設計する。
担当する部品は比較的小さくて簡単なユニット。

5~6年目(ほぼ一人前)

複数かつ中規模なユニット設計を行う。
→先輩や上司の設計する大きな装置の中で、複数のユニットを設計する。
いわゆる副担当として装置設計をする。

7年目以降(一人前)

装置全体を主担当で設計を行う。
→1人で装置全体の設計を担当する。

イメージとしてはこのような流れで,仕事の幅が広がっていきます。
設計する機械の規模や,個人の能力によりこの年数が上下することもあります。

7.機械設計の向き不向き


私の考える機械設計の向き不向きの判断基準は気のとおりです。

向いている人

  • 物作りが好き
  • 機械の仕組みを考えることが好きな人
  • 物理や数学が好き

向いていない人

  • 物作りに興味がない
  • 新しい技術に興味がない
  • 4力学のような物理学が嫌い

ここでは能力的な向き不向きというより,仕事が楽しめるかどうかという本質的な面について挙げました。

ただ上記に挙げたやはり項目最重要だと考えており,その理由は「機械設計を好きになれば,自主的に勉強を継続しレベルアップ出来るから」だと考えています。

逆に言うと機械設計が嫌いであれば

新しい知識を勉強しない→自分のレベルが上がらない→自分の設計した図面がなかなか通らない→ストレスになる→設計が嫌いになる→勉強しない

と負のループを彷徨ってしまうことになります。

知識面に関しては正直な話,学生時代の機械科目に関する知識量の比にならない量と質の勉強が必要になってきます。

ですので、初期能力や知識はそれほど重要でなく自分が好きで機械設計の知識を学び続けられるかというところが最も重要な向き不向きのポイントになるのではないかと考えています。

8.機械設計の将来性【AIに仕事を奪われることはない】


結論から言うと,機械設計の業務が全てAIに置き換わることはないでしょう。

私の考える理由は2つ,下記の通りです。

  • 世の中に無い新たな機構や機械をAIで創造することは難しい
  • 世の中の機械への需要がなくなることはない

とは言え現在のすべての業務が存続するわけではなく,一部のAIによって置き換わっていく仕事もあると考えています。

具体的には下記のような業務です。

  • 強度計算や干渉シミュレーション
  • 2D⇔3Dのモデリング作業&部品図作成

こういった部分は、人間が計算し仕事をするよりもはるかに早くかつ正確にコンピュータで自動化できる未来が来ると考えています。

つまり、より創造的な価値を生み出すことが出来る設計者の需要が高まってくることかと思います。

さらに詳しく機械設計の将来性について知りたい方は,下記記事で解説していますので合わせてご確認ください。

>機械設計の仕事はなくならない!【現役機械設計士が将来性を解説】

最後に

機械設計についての解説は以上です。
こんな長い記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。

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